文治五年,藤原泰衡(ふじわらのやすひら)の襲撃を受けた衣川館(ころもがわやかた)より,『源義経(みなもとのよしつね)』の北行伝説の舞台は,平泉から八戸に上陸,六ヶ所,野内,十三湊,そして三厩へと続く。
切り立った竜飛崎から見た海峡の潮は,強風に煽られ,白波を立てて荒れ狂っていた。
義経は三厩にもどり,持佛の観世音像を波打ち際の岩の上に置き,三日三晩,波風沈静の祈願を一心に唱えた。
夜明けの暁の頃,義経の目前に白髪の老人が現れ「三頭の神通力を備えし龍馬あり。これに乗りて海を渡るべし」と告げる。
老人に姿を変えた観世音は,義経がこの龍馬に跨り,北の大地へと辿り着くまで,無事を一心に祈るのであった。
北海道での義経は,アイヌ民族を愛し,粟や稗の耕作法を教え,アイヌの守り神「オキクルミカムイ」の再来として,人々に「ハンガンカムイ」と呼ばれ,慕われたという。そして,その足跡は,中国大陸へ続いたと言われている。
ねぶた師 穐元和生(あきもとわしょう)作